m-editの日記

加計学園問題を普通の女性として追及していきます。

伊藤詩織さんのジャーナリストとしての手腕

 花田紀凱氏が山口敬之をゲストに招いて、YouYubeで伊藤詩織さんを攻撃している。

 その中で最も醜悪なのは、伊藤さんの仕事を否定していることだ。「受賞するようなドキュメンタリーを作れるはずがない」「いかにもジャーナリスト然としているけど、なんであんな力があるのか、僕は疑問」と、遠慮のない中傷の言葉がつづく。

 少なくとも山口は、伊藤さんの資質を評価し、たとえ一時的にせよTBSに採用しようとした人だ。ジャーナリストとしての手腕を否定すれば、ますます伊藤さんと会食した意味を薄弱なものにしてしまう。

 論理矛盾を招いてでも、伊藤さんの仕事や人格を否定することに躍起になっているとしか思えない。

 伊藤詩織さんの仕事は、鈴木正文編集長が自らペンを執った「GQマガジン」に掲載されている。レイプという辛い事件に遭いながら、伊藤さんが2013年からジャーナリストとして自らのテーマを追い続けていたことがわかる。いくつかの現場に身を置く伊藤さんの姿が、折々の写真付きで紹介されている。読み応えのある、とても優れたインタビュー記事だ。

https://www.gqjapan.jp/culture/celebrity/20180623/shiori-ito-1

 

伊藤詩織さんの優れた仕事

 レイプ事件の犠牲者であり、民事裁判で一審は勝訴をかちとった伊藤詩織さん。事件がクローズアップされているからだろうか、初監督したドキュメンタリー「LONELY DEATH」がネットで公開されている。約45分で、日本における孤独死と遺品整理(特殊清掃)をとりあげている。

 MIYUという特殊清掃の職について1年という若い女性が、主人公的に登場する。背景の解説をするのは、淑徳大学 教授の結城康博氏。教授と共に千葉の団地での「孤独死ゼロ研究会」の活動が紹介されたりもする。

 そして、死後2カ月、誰にも発見されなかった男性の死体が残っている部屋の清掃見積もり、清掃、家族への引き渡しに立ち会っていく。

 とても辛く、悲惨だが、その部屋を故人の生前を思いながら清掃していく人たちが存在しているのは確かな救いだ。カメラは、交わされる会話や視線の先にあるもの、無駄なく、だけど決して機械的ではない動作をていねいに追っている。

 登場する人、全員が「こういう孤独死が、これからの日本では増えていく」と語る。それに抗うことはできない。

 こんなすごい作品を生み出せる人だからこそ、山口敬之と対峙できたのかとさえ思う。

「LONELY DEATH」をぜひ、見てほしい。今ならシネフィルで公開されている。

http://cinefil.tokyo/_ct/17189901

 

支離滅裂の極みとなった加計問題

地元自治体のストーリーが崩壊した加計問題

 5月21日に愛媛県が公開した文書に、加計理事長と安倍首相の2015年2月25日の面会についての記載があり、5月26日には加計学園が「こうした面会はなく、面会があったという報告を県や市に行ったのは誤情報の伝達だった」と発表した。

 ありもしなかった理事長と首相の面談をでっち上げてでも、加計学園愛媛県今治市獣医学部の新設を応援してほしかったのだそうだ。事務局長が記者会見までしてそう弁解している。安倍首相の名を騙って地元に獣医学部設置を認めてほしかったと。

 つまり、加計学園による獣医学部の新設は、首相の応援という飾り付けをしなければ、地元の歓迎は得られないと当時の加計学園事務局側は認識していたことになる。

 これで地元の自治体の説明は根本から否定されることになった。完全崩壊のストーリーは以下だ。

①加戸元知事が主張してきた「愛媛県獣医学部の新設を懇願し、それを受け入れてくれたのは加計学園だけだった」という愛媛県側主導説

今治市が住民説明会で主張した「市の活性化にとって大学誘致は絶大な効果があるが、多額の補助を行っても誘致は難しい。やっと加計学園が応じてくれた」という今治市側懇願説

 獣医学部の新設を正当化してきたすべてのストーリーが崩壊!何というか、もう滅茶苦茶だ。ねつ造、改ざん、居直り、麻痺…加計学園問題や森友問題を考えると、政治そのものにうんざりしてくる。野党の追及が手詰まりなのも仕方がないと思う。何しろ、もうとっくに不正は明らかなのだが、政府だけが居直っているのだから。

 見え見えの嘘を国会で答弁し、まったく罪悪感ももたず、恥じることもない。自民党はこんな政治をいつまで見過ごすのだろう。

 この間、日大のアメフト問題に意識を傾けたのも、清々しい若者の姿がそこにあるからだ(本当は少し物足りない。学生なのだから当局をもっと糾弾してほしいというのが本音)。一服の清涼剤の趣があった。

 とはいえ、加計問題での不正を絶対に許してはならない。

日大アメフト反則で感じたこと

日大DL選手が照らした闇

 5月の連休明けから連日、報道されている「日大アメフト事件」。私自身、実家のすぐ近くに大阪産業大学付属高校があり、卒業生が日大のアメフト部員に4名在籍していることを知って、心配は増えていくばかりである。

 日大DL(ディフェンスライン)選手の5月22日の記者会見をYOUTUBEで丁寧に聴いてみた。すでにネットでも指摘されているが、この選手は、はっきりと「被害者」だということがいえる。

 ①「やる気がない」「闘志が足らない」と言われて、練習や試合から外された

 ②コーチから、「監督に聞いたら、〇〇〇〇をすれば」と、コーチ自身の判断ではなく、上位の意思という形で指示があった

 ③不正ではあるが、チームのためになると組織への貢献という装いがあった

 コーチや監督が意識的に行ったのかどうかは不明だが、アメフト部という閉鎖集団での支配関係を利用して、こうしたマインドコントロールを行い、選手を「不正をやるしかない」と追い詰めたのだ。選手の真面目な気質やレギュラーポジションへの執着を知っているのだから、非常に効果的な追い詰め方だったといえる。

 私でもあなたでも、同じ環境に置かれたら、1プレー目でQBを潰しにいくことは間違いない。

 記者会見で、「自分の弱さからやってしまった」と発言していたが、それはまったく違うと断言したい。彼は、退場してすぐに自分のプレーを後悔し、4日後には退部の決意をしている。やさしさや精神的な強さがあったからマインドコントロールから逃れる決心ができたのだ。

 もちろん、彼を支えた人たちの力も大きい。

 問題の試合以降、5月22日の記者会見まで、父親は東奔西走して彼を守るべく行動している。ワイドショーで報じられている近所のとんかつ屋さんの話では、DL選手は口数が少ないタイプらしい。息子から話を聞きだして事態を理解し、監督や大学当局との会合、規律委員会のヒヤリング、被害選手への謝罪など、連日、彼と行動を共にしていることがわかる。さらにすごいのは、適任の弁護士を見つけ契約していることだ。知力、経済力、行動力を伴う家族があって初めて、マインドコントロールから彼を立ち直させることができたのだ。

 私たち大人がわかっているのは、これが「日大に特殊」な環境ではないことだ。DL選手という優れた人間性を備えた若者が登場しなければ、この闇に光は当てられなかった。

 

 

 

愛媛県知事の中村氏が喚問に応じるなら

国会で中村知事に質問したいこと

 加計学園今治市愛媛県が官邸を訪問する予定であることを、2015年4月2日当日に内閣府文部科学省に知らせたメールが公開された。これで「首相案件文書」はさらに信憑性が高まり、柳瀬氏の「記憶にある限り、会ったことはない」という言い逃れはますます苦しいものになってきた。とは言うものの、「会ったことを認めて、首相案件というのは国家戦略特区のことであり、構造改革特区で失敗を重ねている今治市を激励しただけ」とか、当たり障りないレベルでの面会というストーリーで対処することは十分に考えられる。まだまだ油断はできない。

 そこで、「要請があれば国会に行く」と旗色鮮明にしている中村知事への質問をすることで「首相案件文書」のその後への効果を検証し、いかに重要な指南があったのかを明らかにするという作戦を考えた。

 知事に尋ねたい項目は以下の4点

①柳瀬氏の発言にある「自治体がやらされモードではなく」という言葉に思い当たる点はあるか、担当者はこれをどう捉えて知事に報告したか

②獣医師会の反対も「自治体等が熱意を見せて仕方がないと思わせるのがよい」と柳瀬氏に言われ、どう判断したか

構造改革特区では15回ダメだったのだが、「文科省もいい大学を作るなら反対はしないはず」という柳瀬氏の発言をどう聞いたか

④会合で加計学園は何を質問したか。県の担当は、「下村大臣がけしからんと言っていた」内容は理解したか

 愛媛県にとっては、①や②はやや耳の痛い話であったはずだし、構造改革特区ですでに15回却下されていた(文部科学省から)ので、③はにわかには信じがたい発言だったことだろう。そして、決定的なのは④である。この内容は、愛媛県には初耳のことだろうし、柳瀬氏(もしくは首相の側近)しか知りえない情報だ。

 下村文科大臣が安倍首相に加計学園獣医学部構想についての自己の評価を述べ、安倍首相が加計氏にそれを伝えていたことを愛媛県の担当者が「知った」とすれば、この会合でしかありえない。

 柳瀬氏の記憶が戻らなかったとしても、中村知事を国会に招く意義はとても大きい。

 

 

柳瀬審議官の反論を検証する

根拠が薄い柳瀬氏の反論

 2015年4月2日の首相官邸における面談の内容について、愛媛県職員が作成した備忘録は、「首相案件文書」と呼ばれているとおり、当時首相秘書官だった柳瀬氏の発言が注目されている。柳瀬氏は、10日にコメントを発表した。以下が全文です。

国会でも答弁していますとおり、当時私は、総理秘書官として、日々多くの方々にお会いしていましたが、自分の記憶の限りでは、愛媛県今治市の方にお会いしたことはありません。
 自分の総理秘書官時代には、国会でも答弁していますとおり、50年余り認められていなかった獣医学部の新設がどうなるかという制度論が議論されており、制度を具体的にどこに適用するかという段階ではありませんでした。実際、その後、獣医学部新設を追加規制改革項目として、とり上げるかどうかについては、いわゆる「石破四原則」の決定により、検討が開始されることになり、翌年の2016年11月に、獣医学部新設が国家戦略特区の追加規制改革事項として、決定されたと認識しています。
 具体的な地点の選定手続きは、私が総理秘書官の職を離れてかなり時間がたってから始まり、今治市が特区を活用して、獣医学部新設を行う規制改革が決まったのが17年1月だったと認識しています。
 したがって、報道にありますように、私が外部の方に対して、この案件が首相案件になっているといった具体的な話をすることはあり得ません。(2018/04/10-10:31)

 

 

要約すれば、「国家戦略特区で話題になる前の時期だから、獣医学部新設についてアドバイスするわけがない」というところだろうか。

 一方、前文部科学事務次官の前川さんは、この文書を「加計ありきを示す決定的文書」と評している。獣医学部が検討された当時の国家戦略特区における検討を時系列で整理してみよう。

 

 2014(平成26)年8月5日 新潟市獣医学部新設についてWGに提案

 2014(平成26)年12月3日 新潟市国家戦略特区諮問会議 第2回会議…獣医学部については検討ナシ(新潟市は諦めムード?)

 2016(平成27)年6月5日 愛媛県今治市獣医学部新設についてWGに提案

 2017(平成28)年1月27日 広島県今治市が特区に区域認定

 2017(平成28)年3月30日 広島県今治市 第一回特区認定会議

 

 国家戦略特区では、平成26年5月に特区指定された成田市に医療系大学の設置が認められるという「文科省の規制突破」が確定したのが平成27年7月31日であり、4月といえば成田市分科会において好感触を得られていた時期に該当する。

 構造改革特区で15回の失敗を重ねていた今治市加計学園に、国家戦略特区への方針転換を促すタイミングだったことは明白だと思う。柳瀬さんの反論には全く説得力がないと思うがいかがだろうか。

首相案件文書の読みどころ

 愛媛県職員が2015年4月2日の官邸訪問結果を記録した「首相案件」文書が、農水省からも「発見」された。こちらは現物のペーパーがあり、斎藤農水大臣が記者会見で配布し、一部報道機関が公開している。アエラドットに全文があるので参照されたい。

 

dot.asahi.com

 「首相案件」にスポットが当たっているが、興味深いことが多々ある打合せだ。

出席者が「今治市企画課、愛媛県地域政策課、加計学園事務局長」というのも、その後の特区戦略会議での検討を知っている私たちにすると少し不思議だ。今治市の特区認定は、「広島県今治市」というしまなみ海道地域での特区であり、愛媛県は外れた形になっている。だからこそ、柳瀬秘書官の「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」とか、「獣医師会には、直接対決を避けるよう、既存の獣医大学との差別化を図った特徴を出すことや卒後の見通しなどを明らかにするとともに、自治体等が熱意を見せて仕方がないと思わせるようにするのがいい」いう言葉は重く響く。

 加計学園任せではなく、今治市愛媛県も強力に後押ししてやれよという指令と受け取れるからだ。加計学園の事務局長にしてみれば、一石三鳥の会談であったことは間違いない。