m-editの日記

加計学園問題を普通の女性として追及していきます。

加計問題、ワーキンググループ委員の主張への疑問

ちまたに広がる挙証責任論とは

 加計問題は、私のように「学部の設置認可が出るのかどうか」を見守っている立場からすると、これからが正念場。だが、政争の道具にされている感もあり、真相解明が進まない現状に「どうでもいい」問題となっている面もあるかもしれない。

 それに拍車をかけるように、問題の隠ぺいを図る人たちが「文科省の挙証責任論」を声高に提唱するようになった。単純に言えば、「規制緩和できない理由を文科省は立証できなかったのだから文科省の負け」で、獣医学部の新設は正当、というもの。規制緩和が正当かどうかを「勝ち、負け」に矮小化している論なのだが、これが案外、広く受け入れられている。(詳しく知りたい方は、郷原信郎氏のブログをご参照のこと)

加計問題での”防衛線”「挙証責任」「議論終了」論の崩壊 | 郷原信郎が斬る

 

文科省はWGにどんな説明をしたか

 獣医学部の新設について特区WGは文科省に2回のヒヤリングを行っている。1回目は平成26年8月19日、提案主体は新潟市だった。文科省からの説明は高等教育局長が行っており、平成25年の「獣医師養成のあり方について 有識者会議からの提言」を紹介し、はっきりと「獣医学部新設というテーマを特区で議論することに反対」の意思を述べている。

〇吉田局長 文科省においては、25年3月末に「これまでの議論の整理~教育改革の進捗状況と獣医師養成の在り方について~」という取りまとめを行いましたが、その報告書では入学定員も含む今後の獣医師養成のあり方について、獣医師養成についての議論は特区制度になじまないため、全国的見地から行うのが前提であるということ、また、獣医系大学全体の定員等については、獣医学関係者を初めとして、隣接分野や関連分野の専門家等も含め、さらに広く意見を得ていく必要があるということ。

 2回目は平成28年9月16日。ここでは、「2015再興戦略改訂版で示された4条件」を示しつつ、今治市からの提案内容では、既存の獣医学部で対応可能なこと、またライフサイエンス分野での獣医師の需給は明らかでないが、通常の獣医師は足りていることから、獣医学部新設に反対という立場が述べられている。

 〇浅野課長 1つは、今、申し上げた再興戦略の改訂版の2015年の記載も踏まえまして、提案主体による構想が具体化した場合には近年の獣医の需要の動向も考慮しつつ全国的見地から検討を行うとしているところでございます。幾つか論点というか前に御提出いただいた資料について、例えばまず1つ目は、国際的対応の可能な獣医師の養成ということがございます。これにつきましては、全国大学獣医学関係代表者協議会におきまして、全国国際獣疫事務局が定めた獣医学に関する教育内容を反映させたモデルコアカリキュラムを平成23年に定めて、各大学において教育内容の質の改善を図っております。各大学においてモデルコアカリキュラムに基づいて現在、公衆衛生学総論、公衆衛生学実習、食品衛生学等に関する教育研究も実施しておりまして、毎年公衆衛生獣医師というのは輩出をしております。

危機管理発生時の学術支援拠点につきましては、動物由来感染症の統御や家畜の越境感染症の貿易への対応は、一義的には国や県において担うものであります。国や県において危機管理対応を行う人材の養成については、各大学においてモデルコアカリキュラムに基づいて人獣共通感染症学、動物感染症学等に関する教育研究を実施しているところであります。

3点目、獣医学の領域における人間運動生理学の応用については、そのモデルコアカリキュラムに生理学や臨床学等の講義、演習が明記されておりまして、各大学においてライフサイエンス分野での活躍できる人材の養成に取り組んでおりますが、その具体的な需要は明確となってはおりません。

この3点について、今、申し上げましたように、各大学でそれぞれコアカリキュラムで取り組んでいる内容であるのではないかと考えております。

  獣医学部を新設しない(=規制緩和しない)理由として、私は十分だと考える。

獣医学部新設には国庫負担を伴う

 獣医学部新設という規制緩和は、薬局やコンビニ出店の規制緩和とはかなり様相が異なる問題だ。大学には教育の質を保つために国庫から毎年補助金が投入される。決して少ない金額ではない。共済事業団が公表している全570大学の一覧がこれ

http://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h28a.pdf

 学生一人当たりでいうと1年間の平均は15万円らしいが、学部系統で当然異なるはずだ。そうした統計はないので単純な比較を試みた。1位の早稲田と9位の北里大学で比べてみると、

1位 早稲田 90億円 学部生 42860人 一人当たり21万円

9位 北里大学 41億円 学部生 7233人 一人当たり56万円

実習設備や人的資本の配置が濃厚になるので、医学部系はやはり補助金も多いのだ。社会的ニーズがそう高くないのに、高コストの学部を軽々に設置してほしくないものだ。

挙証責任のたとえ話

WG(および内閣府)と文科省の挙証責任について、前川喜平参考人は国会で以下のように述べた。

内閣府が勝った、文科省が負けた、だから国民に対してはこれをやるんだと説明する、というのでは国民に対する説明にはならない。挙証責任の在りかということと、国民に対する説明責任とは全く別物で、国民に対する説明責任は政府一体として負わなければならない。挙証責任があって、その議論に負けたから文科省が説明するんだという議論にはならないはずだ。

まったくその通りなのだが、これを「ある一家の24時間風呂購入の是非」にたとえてみようと思う。

家計を管理しているのは母、2人の娘がおり、姉が24時間風呂を買ってほしいと言い出した。妹は反対。「そんなの必要ない。今のお風呂で十分」と言う。姉は、業者からメリットを聞かされ、すっかり24時間風呂に入れ込み、妹に「反対の理由を説明せよ」と。妹は、「不要」と言うばかりでランニングコストなどの見通しは示さなかった。そんな妹の姿勢に姉は、「説明しなかったんだから妹の負け。お母さん、24時間風呂買って」と言ってきた。

こう言われて、「はいはい」と24時間風呂を買う母は誰もいないだろう。確かに、妹から反対の理由は十分に提示されなかったかもしれないが、現状で十分というだけで足りているともいえる。むしろきちんと説明して欲しいのは、大きな家計支出を自分に迫る姉からだ。「24時間風呂のメリットをお母さんにちゃんと説明しなさいよ」

ちょうど、こんな感じになるのでは、と思う。母の立場が私たち国民だ。

とはいえ、この特区の議論の中で日本の獣医学教育がいろいろな問題を抱えていることもわかってきた。定員増や学部の統合再編などが広く論議されていくといいなと思っている。