m-editの日記

加計学園問題を普通の女性として追及していきます。

「これからの日本、これからの教育」(前川喜平/寺脇研)を読んで

 文部行政に通う、熱と知恵が伝わってくる

 自分自身と学校教育との深い関わりを改めて思い起こした。

 70年代初め、高校進学にあたり五木模擬テストの偏差値を見ながら受験校を決めていた姉の姿、論説文を読解するために読んだ「中教審答申」、80年代初め、国立大学の学費値上げに抗議して文科省前でデモしたこと、90年代、社会人になってから制作を手掛けた数々の大学案内、21世紀になってから大学職員として短大の未来像を考えていたこと、私は教育政策の移り変わりを受け止めながら生きてきたといえる。

 といっても、本当に「受け止めるだけ」だったのだなと、今更ながらに思う。文科省から送付される味も素っ気もない文章が、こんなにも人間くさいドラマがあって発せられていたとは! 前川喜平さんと寺脇研さんが語る教育改革は、それほどにダイナミックで熱をもっている。

 生涯学習、高校無償化、教科書問題など、大局的なテーマから政治家からの横槍の巧みな捌き方まで、信頼関係にある2人だからこその会話が続く。ドラマチックに話す寺脇さんと淡々と語る前川さんの対比も面白い。それにしても、2人とも数字に強い。高校の総合学科の数や児童養護施設を退所することになる18歳の人数などがスラスラと出てくる。官僚人生の中で数年間、地方の教育現場で過ごしていたこともあるせいか、いろいろな地方の実情にも通じているなと感じる。課題を見出しては知恵を絞り、緻密に政策につなげてきた手腕にはまったく頭が下がる。

 内幕暴露話を立ち聞きするような楽しさもある。何かと先鋭的な寺脇さんが、朝鮮学校無償化の話題で義家氏や下村氏を批判するのは当然としても、飄々とした感じの前川さんがネトウヨを「教育の失敗だと思う」と断罪していたりしてドキリとさせられる。

 文科省時代の前川さんのノートパソコンの待ち受けがチェ・ゲバラだったというのも、なかなか衝撃的な告白だ。教育への関心が深まるに違いない一冊です。